自分でできる免疫の引き上げ方

我々の体は日々意識するしないにかかわらずがん細胞と戦っています。一般論を先にお伝えしますと免疫力が下がると免疫細胞の力でがん細胞の増殖を押さえ込む事は難しくなります。逆に免疫の力が高まっていると癌は容易に増殖することができません。さてでは免疫の力とは何を持って免疫力とするのでしょうか。これには実は多くの尺度があります。まず人間の免疫の仕組みを考えると、自然免疫系と獲得免疫系に分かれます。前者は細胞で言うと主にナチュラルキラー細胞が後者はTリンパ球とBリンパ球になります。もっと細かい分類はありますが、ご興味のある方は成書を見ていただくとして大事な事はこの3種類の細胞を合わせてリンパ球と呼びます。免疫の力とはこのリンパ球の数のバランスや数そのもの、さらにそれらの細胞が出す分泌するサイトカインを調べることによって免疫力を測ることができますが実際の臨床の現場では様々な状況によって変化するため頻回には測定しないことが多いです。しかし、あえて簡略的に示すのであれば、リンパ球の数そのものはとても重要な指標となります。リンパ球は白血球の中の1種で通常は白血球の20から55%あります。血液検査の項目を見ていただくと、例えば白血球が4000/μlでリンパ球が25%(lymphと書かれていることがあり)とあると4000の25%なので1000/μlとなります。がんが進行していくと、この数が1000/μl以下になることが珍しくありません。やはりリンパ球の数は多い方が良いです。間質性肺炎や自己免疫疾患の方を除いては、リンパ球の数はできれば2000/μlあればかなりがんが増殖しにくい環境になります。注射で一時的に増やすことはできますが、持続はしません。安定して増やしていくためには免疫を引き上げる食事療法が望ましいです。私はこのリンパ球の数を増やす食事療法を免疫栄養療法と称し講演してきました。個人差はありますが、大雑把に言うと、①質の良いタンパク質を取ること、②炎症を抑えること、③十分なミネラルを取ること、④ファイトケミカルを積極的に摂取することにつきます。①摂取すべきタンパク質の1日量は、肝臓や腎臓の働き、体力の衰弱度、血液検査による蛋白の数字を参考にして設定しますが、赤身の肉を中心に1日あたり150から250グラムをお勧めすることが多いです。②人間の体には様々な形で炎症が引き起こされます。例えば風邪をひいたときや肺炎、尿路感染症などの感染症にかかった時、外傷などの原因で炎症の数値であるCRPが上昇しているなどと言う事は聞いたことがあるかもしれません。その他にも癌は成長の過程で炎症があればあるほど成長しやすくまたがんを崩すような治療を行うとそれが元で炎症を招くこともあります。炎症を抑えるのは、ほうれん草、ブロッコリー、生姜、アボカドなどの食材とケルセチンが多く含まれる玉ねぎの皮のパウダーやオメガ3オイルです。オメガ3オイルは1日あたり小さじ2杯までの摂取をお勧めしています。③十分なミネラルとは、通常の食事ではなかなか補うのは困難で定評のあるマルチミネラル系のサプリメントで消化吸収を促進するためのコロイド化やキレート技術が使われた商品をお勧めしています。④ファイトケミカルは別途お伝えします。私のもとにコンサルティングに来る進行がんの方は、リンパ球の数が1000/μl以下の方がほとんどです。かなり衰弱してほとんど食べない人を除いては、免疫栄養療法を根気よく続けていただくことで、徐々にリンパ球数を増やしてその過程でがんを縮小させていくことができる方もいらっしゃいます。標準治療の期間が長いほどリンパ球数は回復しにくい傾向にありますので注意が必要です。実例として70代女性(仮にSさん)で子宮頸がんによる多発リンパ節転移ステージIIIC期でコンサルティング中の方がいらっしゃいます。Sさんは地元の病院で4年前に標準治療、同時化学放射線治療を1コース受けましたが、嘔吐を繰り返すことで以後の治療は希望せず免疫栄養療法を受けていただいています。リンパ節転移は大動脈周辺に5カ所散らばっていました。他に特に疾患はなく、全身状態は化学療法を受けていた頃に比べると臓器障害はなく、生き生きとされ格段に良くなっています。この食事療法を4年間受けていただきリンパ節転移は3カ所になり今もまだ徐々に縮小中です。多くのがんで困っている方にこの免疫栄養療法は受けていただきたいですね。


 

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