地球上における動物の歴史に比べ植物の歴史は比較にならないほど長くその長い歴史の中で培われた能力の中には強い紫外線や雨風にさらされても酸化を防ぐ抗酸化力や抗菌力、害虫や動物などを遠ざける匂いを出して身を守っています。この自衛の手段として色素や香り辛み苦みなどに含まれる機能成分をファイトケミカルと呼びます。人間はファイトケミカルを合成することはできませんが野菜や果物を食べることでファイトケミカルを摂取できます。ファイトケミカルのPhytoとは植物を意味するギリシャ語でPhytochemical(ファイトケミカル/フィトケミカルとも言います)は、野菜や果実、穀物等の植物に含まれる非栄養性の生理活性物質と定義され摂取した際の健康への有益性と関連づけて使用されることが多く、特定のファイトケミカルは、遺伝子を傷つける物質から体を守る抗酸化活性、抗炎症作用、アポトーシス誘導作用が認められるためがんの化学予防剤としての機能が期待されています。アメリカ国立がん研究所はファイトケミカルを含む食品でがん予防に効果のあるものをデザイナーズフーズとして発表しております。
ファイトケミカルの種類
•フラボノイド
ポリフェノールの仲間で植物の色素成分です。玉ねぎやブロッコリーに含まれるフラボノール類、大豆に含まれるイソフラボン、緑茶に含まれるカテキンなどで強い抗酸化作用があり、発がん物質の活性化を阻害します。
•カロテノイド
植物に含まれる色素で、紫外線から生体を守り活性酸素を除去する作用があります。カロテノイドは、β-カロテンやα-カロテン、ルテインがあり近年はβ-カロテンとα-カロテンの同時摂取が強力な抗酸化作用を持つことがわかっています。これらは緑黄色野菜に多く含まれています。
•リコピン
リコピンはトマトの赤い色素で熱に強く強力な抗酸化作用があります。活性酸素を消去する能力がビタミンEの100倍あるといわれています。リコピンには乳がん、肺がん、子宮がんなどのがん細胞の成長を抑える作用があることや、皮膚がんの原因となる紫外線から皮膚を守る作用があることもわかっています。リコピンは加工用の赤い色の強いトマトに多く含まれているので効果的に摂るにはトマトジュースが便利です。
•ポリフェノール
ポリフェノールは赤ワインやぶどう、なす、桑の実などに含まれていて細胞膜上で活性酸素を除去し、発ガンや老化を防ぐことで脚光を浴びています。ポリフェノールの効果は2~3時間ですので食事のたびに補給するのが良いです。
•アントシアニン
アントシアニンはブルーベリーやブドウの皮、紫キャベツ、赤しそなどに含まれる青紫色の色素でポリフェノールの一種です。アントシアニンはスマートフォンなどからくるブルーライトによる眼精疲労の改善と強い抗酸化作用があります。
•フコキサンチン
わかめ、昆布、ひじきなどの海藻類に含まれている色素です。多糖体のフコイダンとは違います。フコキサンチンは強力な抗腫瘍作用があることがわかり、日本でも盛んに研究されるようになりました。。
•クロロフィル
植物や海藻類の細胞にある濃緑色の色素で、光合成に必要です。ピーマン、ほうれん草、にら、あしたばなどの緑色の野菜や緑茶に多く含まれています。 クロロフィルには抗腫瘍効果が認められています。
•アリイン
ニンニクの細胞内に存在するイオウを含むアリインが細胞外に漏出した際に同じくニンニクに含まれるアリナーゼと反応してニンニク特有の臭い成分アリシンへと変換されます。害虫から身を守る仕組みでもあります。料理番組で包丁の横でニンニクをつぶしてから刻むのをご覧になったことがある方もいらっしゃると思いますが、これはニンニクのにおいを際立たせるための知恵なのです。そしてアリシンは加熱するとジアリルジスルフィドやジアリルトリスルフィドに変換され抗腫瘍効果を発揮します。
•ルテイン
カロテノイドの一種で、ほうれん草、マリーゴールド、とうもろこしなどに含まれていて、抗酸化作用の他、乳がん等に抗腫瘍効果があることがわかってきました。
いずれにせよファイトケミカルは摂取後、有効的に働ける時間が短く植物の細胞壁の周囲にあり、普通に食べても吸収される量は限られているためスープにして摂取するのが効率的です。ファイトケミカルスープは、白菜やキャベツ、人参、玉ねぎ、かぼちゃ各150gを細切れにして1Lの水の中に入れて鍋でコトコトと弱火で30分煮出すやり方が一般的です。それを1日あたり3~400mlとれば、白血球が増えやすく免疫力も引き上がります。ファイトケミカルスープは一度作れば冷蔵庫で3日間保存する事は可能です。ただし腎臓の機能低下があるとカリウムが溜まりやすくなるので、医師に相談して下さい。実例として60代の男性(仮にDさん)は大腸癌術後転移性肺腫瘍で体力がかなり消耗し標準治療を継続する事はおろか倦怠感と筋力低下で食事はかなりとれない状態でご縁をいただきました。がんによって生命の危機が訪れるのはがんそのものよりは、このように衰弱によることが多いのです。1日あたり800kcal前後だったので栄養力を引き上げて、体力をつけるのが最優先でありファイトケミカルスープを飲んでもらいましたが2週間たっても状況はあまり変わりませんでした。ここまで時間的に余裕は無いことがわかっていたので、単にカロリーを引き上げるだけではなく、抗炎症のオメガスリーでも不十分と判断し過去の経験より、濃いココアを勧めさせていただいたところ1週間もたたないうちに体力を引き上がってくることがわかりました。その後は痛みのコントロールなどをしながら、徐々に治療を行うことができるようになりました。今回ココアを追加したのは経験則からですが、次の一手は何をしたらよいかを考えながら対応することが重要です。
コメント
COMMENT