革新的なワクチンが切り拓くトリプルネガティブ乳がん治療の未来

ワシントン大学医学部が開発した新しいDNAワクチンが、トリプルネガティブ乳がん(TNBC:triple-negative breast cancer)の再発予防において有望な結果を示しました。第I相試験では、ネオアンチゲン(腫瘍特異的変異タンパク質)を標的とするワクチンが患者の免疫応答を効果的に誘導し、再発率を大幅に低下させることが確認されました。

ワクチンの開発背景
TNBCは進行が早く化学療法以外の治療選択肢が限られています。この研究では、患者固有のネオアンチゲンを用いたDNAワクチンを設計。次世代シーケンシング技術を駆使し、腫瘍および患者の全ゲノム情報を解析、特異的なネオアンチゲンを予測してワクチンに組み込みました。1回のワクチンには4~20種類のネオアンチゲンが含まれ、平均で11種類が使用されました。

試験結果
試験には術後の化学療法を受けた18人の患者が参加。ワクチン接種後、14人(78%)で免疫応答が確認されました。追跡調査(中央値36か月)では、87.5%の患者が再発なく生存。従来の治療を受けた歴史的な対照群と比較しても、49%から大幅な改善が見られました。

副作用と今後の展望
ワクチンは全般的に良好な安全性を示し、主な副作用は注射部位の痛み(軽度)や筋肉痛でした。研究チームは現在、標準治療とワクチンを組み合わせたランダム化比較試験を進めています。ワクチンの予防的役割だけでなく、TNBCの治療成果をさらに向上させる可能性が期待されています。

ネオアンチゲンワクチンの未来
研究を主導したギランダーズ教授は、「ネオアンチゲンワクチンはTNBCのような侵攻性がんの治療に新たな選択肢を提供できる」と述べています。患者固有の免疫応答を利用した個別化治療は、がん治療の未来を形作る重要な技術として注目されています。

TNBCの治療成果を変える可能性を秘めたこの研究は、がん免疫療法の新たな一歩を示しています。今後の臨床試験の成果が待たれます。

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