PFAS汚染とがん発生率に関する研究の詳細 2025年2月のLancet誌より

研究の背景
パーフルオロアルキル化合物(PFAS)は、耐久性が高く分解しにくい「永遠の化学物質」として知られ、1940年代以降、消費者製品や工業用途で広く使用されてきました。これらの化学物質は環境中に蓄積し、飲料水を通じて人体に取り込まれることが多いです。過去の研究では、PFASが腎臓がん、乳がん、精巣がんなどの健康問題と関連していることが示されています。
本研究は、2016年から2021年の間に米国で報告されたがん症例と、EPA(米国環境保護庁)が収集した飲料水中のPFAS汚染データを用いて、PFAS汚染とがん発生率の関連を初めて包括的に調査されました。

主な研究結果
がんの種類とリスク増加:
PFAS汚染は、消化器系、内分泌系、呼吸器系、口腔・咽頭がんの発生率増加と関連していました。
特定のPFAS化合物とがんの関連性が明確に示されており、例えば、PFBS(ペルフルオロブタン酸スルホン酸)は口腔・咽頭がんのリスクを33%増加させ、PFNA(ペルフルオロノナン酸)やPFHpA(ペルフルオロヘプタン酸)は甲状腺がんのリスク増加と関連していました。
性別による違い:
男性では、白血病、尿路系がん、脳腫瘍、軟部組織がんの発生率が高く、女性では甲状腺がん、口腔・咽頭がん、軟部組織がんの発生率が高いことが確認されました。
年間がん症例数:
PFAS汚染は、米国で年間約6,800件のがん症例に寄与していると推定されています。この数字は、EPAの最新データに基づいて算出されました。
汚染の範囲:
PFASは米国の飲料水供給の約45%で検出されており、特に都市部や工業施設の近くで高濃度が確認されています。

研究の意義と課題
規制の必要性:
本研究は、PFAS汚染が公衆衛生に与える深刻な影響を示しており、EPAが2029年から施行予定のPFAS規制の重要性を強調しています。ただし、研究者たちは、より厳しい基準が必要である可能性を指摘しています。
さらなる研究の必要性:
本研究は地域レベルでの関連性を示したものであり、因果関係を明確にするためには個人レベルでの研究が必要です。また、PFASががんを引き起こす生物学的メカニズムの解明も求められています。
政策への影響:
本研究は、PFAS汚染に対する規制強化や公衆衛生介入の必要性を裏付ける科学的根拠を提供しています。特に、現在規制されていないPFAS化合物の監視と規制が求められています。

結論
この研究は、PFAS汚染が特定のがん発生率の増加と関連していることを示し、公衆衛生政策や規制の見直しに向けた重要なデータを提供しています。特に、PFAS汚染がもたらす健康リスクを軽減するためには、さらなる研究と規制の強化が必要です。

参考文献:Cancer incidence associated with PFAS contamination of drinking water in the USA. Lancet Volume 26, Issue2 p160 February 2025

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