公開日: 2026年1月3日 カテゴリー: 先端医療・研究ニュース
日頃より当センターの活動にご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
本日は、がん治療の未来を大きく変えうる、画期的な研究成果についてご紹介いたします。2025年7月、米国フロリダ大学(University of Florida)の研究チームが、「ユニバーサル(汎用型)mRNAがんワクチン」に関する重要な論文を、権威ある学術誌『Nature Biomedical Engineering』に発表いたしました。
これまでのがんワクチン開発の主流は、患者様一人ひとりのがん細胞の特徴に合わせた「個別化(オーダーメイド)」、あるいは特定の抗原を標的とする手法でした。しかし、今回発表されたアプローチは、それらとは一線を画すものです。
「特定しない」からこそ、強力に効く
研究チームが開発したmRNAワクチンは、特定のがん抗原やウイルスを標的とするものではありません。その代わりに、身体全体の免疫系を強力に賦活(活性化)させることに主眼が置かれています。
具体的には、このmRNAワクチンは腫瘍内での「PD-L1」というタンパク質の等を発現させると同時に、I型インターフェロン応答と呼ばれる初期免疫反応をブーストします。通常、PD-L1はがん細胞が免疫から逃れるために利用するものですが、このワクチンによって免疫環境が劇的に変化することで、本来は攻撃が効きにくい「冷たい腫瘍(Cold Tumor)」に対しても、免疫細胞(T細胞)が強力に認識・攻撃を開始することが確認されました。
既存の免疫療法との相乗効果
マウスモデルを用いた実験では、このワクチンを既存の免疫チェックポイント阻害剤(PD-1阻害剤など)と併用することで、治療抵抗性のメラノーマ(悪性黒色腫)に対して顕著な抗腫瘍効果を示しました。さらに、皮膚がん、脳腫瘍、骨肉腫などのモデルにおいても、ワクチン単独での腫瘍消失例が報告されています。
論文の共著者であるDuane Mitchell博士は、「患者自身の免疫応答を『目覚めさせる』普遍的な方法になり得る」と述べています。これは、外科手術、放射線、化学療法に続く、第4の柱としての免疫療法を、より多くの患者様にとって身近な「既製品(Off-the-shelf)」の治療薬へと進化させる可能性を秘めています。
人類共通の課題に対する「普遍的」な光
「ユニバーサル」であるということは、煩雑な個別化プロセスを経ることなく、迅速に多くの患者様へ治療を届けられることを意味します。研究チームは現在、早期の臨床試験(ヒトへの投与)開始に向け、製剤の最適化を急いでいます。
当センターでは、こうした「がん治療のパラダイムシフト」となりうる先端技術の動向を、引き続き注視し、皆様に正確な情報としてお届けしてまいります。
未知の病に立ち向かうすべての方々に、科学の進歩がもたらす光が届くことを願ってやみません。

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