2025年6月、MITのJameel Clinicが発表したBoltz-2は、創薬研究者にとって待望のツールとなるかもしれません。AlphaFold 3に匹敵する精度を持ちながら、分子結合親和性を高速かつ高精度で予測できるこのモデルは、完全オープンソースとして公開され、商用利用も可能です。この記事では、Boltz-2の技術的背景と創薬への応用可能性について解説します。
Boltz-2とは何か?
- 開発元:MIT Jameel Clinic × Recursion(AI創薬企業)
- 特徴:
- 分子結合親和性(binding affinity)を約20秒で予測
- AlphaFold 3レベルの構造予測精度
- MITライセンスで商用利用可能
- トレーニングコードも公開されており、独自データでのファインチューニングが可能
なぜ結合親和性が重要なのか?
結合親和性は、薬剤候補が標的分子とどれだけ強く結合するかを示す指標であり、創薬プロセスの「ヒット探索」から「リード最適化」までの進行に大きく影響します。従来はFEP(自由エネルギー摂動)などの物理ベースの計算が主流でしたが、Boltz-2はこれを1000倍高速に実行可能です。
Boltz-2の技術的進化
- 学習データ:
- PDB(Protein Data Bank)に加え、MISATO、mdCATH、ATLASなどの分子動力学シミュレーション
- PubChem、ChEMBLなどの実験的結合親和性データベース
- 新機能:
- テンプレート構造による予測精度向上
- ポケット条件付けによる標的部位へのリガンド誘導
オープンソースの力
Boltz-1の公開後、Slackコミュニティには1300人以上の開発者が集まり、改良や応用例を共有してきました。Boltz-2も同様に、学術界・産業界の垣根を越えた協働を促進すると期待されています。
MITのRegina Barzilay教授は「これは生命科学だけでなく、機械学習とコンピュータサイエンスの進歩でもある」と語っています。
日本の研究者への提言
- Boltz-2は、国内の創薬ベンチャーや大学研究室でもすぐに導入可能です。
- 自前の結合データを活用してモデルを微調整することで、特定疾患や標的に特化した予測が可能になります。
- 実験とAI予測を組み合わせた「wet & dry lab-in-a-loop」戦略により、研究効率の飛躍的向上が見込まれます。
未来への展望
Boltz-2は小分子創薬に特化していますが、今後はペプチド、核酸、抗体などへの応用も期待されています。Corso博士は「in silico予測の限界をさらに押し広げる」と語り、Wohlwend博士は「生物学者が機械学習に挑戦するきっかけになることを願っている」と述べています。
まとめ
Boltz-2は、AIと創薬の融合を加速させる革新的なツールです。日本の研究者にとっても、世界の最先端と肩を並べるチャンスが広がっています。今こそ、オープンソースの力を活用し、次世代の創薬に挑戦してみませんか?
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