多角的アプローチで挑む:新たな免疫療法が悪性膠芽腫を攻撃

悪性膠芽腫(GBM)は成人における最も一般的な悪性脳腫瘍であり、その治療の難しさは血液脳関門や免疫抑制的な腫瘍微小環境(TME:tumor microenvironment)によるものです。この難題に対し、バーゼル大学と同大学病院の研究者たちは、新しい免疫療法を開発しました。この療法はマウスを用いた実験で、腫瘍細胞を完全に除去する成果を上げています。

CAR T細胞療法の進化
研究チームは、EGFRvIII変異を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を開発しました。このCAR T細胞は、TME内で腫瘍がマクロファージやミクログリアを「裏切り者」に変える信号(CD47-SIRPα経路)を遮断する分子を分泌するよう設計されています。この遮断により、免疫細胞は腫瘍を支持する役割から一転して、腫瘍攻撃を助ける役割を果たすようになります。

マウスモデルでの成功
マウスにヒト悪性膠芽腫細胞を移植した実験では、このCAR T細胞療法がすべての腫瘍細胞を排除することが確認されました。また、リンパ腫に対しても有望な結果が得られています。この治療は局所的に注射されるため、全身への副作用が抑えられる可能性が高いと考えられています。

今後の課題と展望
研究チームは、臨床試験を通じてこの治療法の安全性と有効性を確認する予定です。一方で、CAR T細胞療法に共通する神経系への副作用がどの程度抑えられるかも検証が必要です。このアプローチは、がん治療の精度を高め、患者の負担を軽減する次世代免疫療法として期待されています。

新たな悪性膠芽腫治療法は、腫瘍そのものだけでなく、その環境全体を標的とすることで、治療の新しい可能性を切り開いています。この進展が臨床現場での成果につながる日が待たれます。

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