フルクトース(果糖)は肝臓で変換され腫瘍増殖に働く

2024年12月4日付けで発表された研究によると、高フルクトースコーンシロップ(HFCS)などの形で日常的に摂取されるフルクトースが、肝臓を介して腫瘍成長を促進する可能性が示されました。この研究は、ワシントン大学医学部のゲイリー・パティ博士の研究チームによるもので、「Nature」誌に掲載されました。果糖は、果物やハチミツ、清涼飲料などに含まれる単糖類の一種で、糖質の最小単位です。果糖は糖新生によってブドウ糖に変換されます。

フルクトースは直接的な燃料ではない
これまで、フルクトースはがん細胞の直接的な栄養源として作用する可能性が指摘されてきましたが、今回の研究は異なる視点を提供しています。研究者たちは、腫瘍細胞自体がフルクトースを効率的に代謝できないことを発見しました。腫瘍細胞にはフルクトース代謝に必要な酵素であるketohexokinase-C(KHK-C)が発現していないためです。その代わり、肝臓がフルクトースを代謝し、がん細胞が利用できるリン脂質(特にリゾホスファチジルコリン、LPC)を血中に放出することが明らかになりました。

肝臓の役割とリン脂質輸送
肝臓の働きが腫瘍成長において重要であることが、この研究で強調されています。肝臓細胞がフルクトースを摂取すると、代謝の結果としてLPCが生成されます。このLPCは血液中を循環し、腫瘍細胞によって取り込まれ、細胞膜の主要成分であるホスファチジルコリンに変換されます。研究では、フルクトースを多く含む食事を与えた腫瘍モデルマウスで、LPCの血中濃度が7倍以上に増加したことが報告されています。

研究のハイライト
• フルクトースを多く含む食事は、メラノーマ、乳がん、子宮頸がんなど複数のがんモデルで腫瘍の成長速度を2倍以上に加速しました。
• 血糖値や体重、インスリンレベルに影響を与えず、腫瘍成長が促進されたことが示唆されます。
• 腫瘍単独ではなく、肝臓との相互作用が重要であることが強調されています。

食事とがん治療の新しいアプローチ
今回の研究結果は、フルクトース摂取が腫瘍成長を助長する可能性を示しており、がん治療の新たな方針として、「健康な細胞の代謝を標的とする治療」の重要性を示唆しています。これには、フルクトース代謝を抑制する薬剤の開発も含まれます。
研究チームは、「食事の工夫ががん治療に寄与する可能性がある」としながらも、実際にフルクトースを完全に排除することの困難さを指摘しています。また、この知見を臨床試験に応用するべく、さらなる研究が進められています。

結論
フルクトースの摂取は、直接的ではなく肝臓を介した代謝産物を通じて腫瘍成長を促進します。この発見は、食事とがん治療の関係性について新たな視点を提供し、治療戦略における食事の役割を再評価するきっかけとなるでしょう。
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参考情報
• 論文: Dietary fructose enhances tumor growth indirectly via interorgan lipid transfer (Nature誌掲載)
• 研究者インタビュー: ゲイリー・パティ博士 (ワシントン大学医学部)

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