みなさんの部屋を少し見回してみてください。
机の上のボールペン、キッチンの保存容器、コンビニのプラスチック包装…。
現代の私たちの暮らしには、ありとあらゆるところにプラスチックが存在しています。
でも今、問題視されているのは「目に見えるプラスチック」だけではなく、私たちの体内にすでに存在している“見えないプラスチック”です。
プラスチックが溶け出し、粉砕され、微細化して私たちの呼吸や食事を通じて体内に取り込まれることで、知らないうちに深刻な健康被害を引き起こしている可能性が、最新の研究で次々と明らかになっています。
日本で増え続ける「がん」 その背景に“目に見えない危険”?
日本では、2025年時点でも「がん」は人々の死因第1位です。過去50年間、一貫して死亡数が右肩上がりに増えています。
一方、アメリカでは25年前からがんによる死亡数が減少に転じています。検診制度や食生活の違いだけではなく、日常生活での有害物質への曝露の差がこのトレンドのカギになっている可能性があるのです。
その代表的な存在が、マイクロプラスチックとナノプラスチックです。
飲み水から空気まで…すでに体に入り込んでいるプラスチック
2024年、米コロンビア大学の研究チームは、1リットルのペットボトルの水に最大24万個の微細なプラスチック粒子が含まれているという驚愕のデータを発表しました。
目に見えないほど小さくなったマイクロ(5mm以下)・ナノプラスチック(1ミリの100万分の1)は、私たちが以下の経路から日常的に体内へ取り込み続けていると考えられています。
- プラスチック容器から食品や飲料へと溶け出す
- マイクロプラスチックを取り込んだ魚介類などの摂取
- 大気に舞う微細プラスチックの呼吸による吸引
そして驚くべきことに、肺、心臓、脳、母乳、精液、便、血液、さらには認知症患者の脳内にまでプラスチックの痕跡が発見されているのです。
【最新研究】マイクロプラスチックが肺細胞を「がん性変化」させる可能性
2025年7月、ウィーン医科大学が発表した最新の研究(Journal of Hazardous Materials 掲載)によって、空気から肺へと入り込むマイクロ・ナノサイズのプラスチック(MNPs)が健康な肺細胞に悪性変化を引き起こすことが実験で確認されました。
ポリスチレン製のナノプラスチック(直径0.00025mm)は、日常的に使われる食品包装やヨーグルト容器、使い捨てカップ、コンビニ容器などに多く使われている素材です。
研究によると、
- 健康な肺細胞がこれらの微粒子をがん細胞よりも多く取り込み
- DNA損傷、酸化ストレス、細胞移動の活性化など、がん初期にみられる変化が起こる
- DNA修復機能も弱まり、がんの芽が育つ土壌が整えられてしまう
という恐るべき結果が示されました。
「肺細胞は、すでにプラスチック粒子のストレスに抵抗しようと抗酸化防衛システムを起動していました」と研究者は述べています。短時間の曝露でも健康な細胞には深刻な変化が起こり、慢性的な肺疾患やがん形成への関与が疑われています。
炎症、ホルモンかく乱、そしてがん── “プラスチックの添加剤”が引き起こす影響
プラスチック自体ではなく、その中に含まれる化学添加物(フタル酸エステル類、難燃剤、重金属など)が問題です。
これらは、プラスチックが劣化してマイクロ・ナノサイズになることで体内に入りやすくなり、以下のような影響をもたらすとされています:
- 慢性炎症
- ホルモン系のかく乱(生理不順、不妊、甲状腺異常など)
- 神経変性疾患(アルツハイマー病など)
- 循環器疾患(心筋梗塞や脳卒中リスクの増大)
さらに、頸動脈プラークにマイクロプラスチックが多く含まれていた患者ほど、心血管疾患や死亡率が高かったという報告もあり、無関係とは言い切れない状況になってきています。
今日からできる、小さな「見直し」で未来を守る
マイクロプラスチックの完全回避は今のところほぼ不可能に近いですが、暴露を減らす努力は私たち一人ひとりにできることです。
- プラスチック容器で食品を加熱しない(→陶器や耐熱ガラスを使う)
- ペットボトルの摂取を減らし、水道水や浄水器を活用
- プラスチック製品ではなく、ガラス・金属・木などの持続可能な素材を選ぶ
- ポリエステル衣料の洗濯頻度を減らす or 洗濯フィルターの導入
最後に:あなたの部屋には、すでに「見えない脅威」が潜んでいる
がんの増加は、本当に偶然でしょうか?
「たまたま運が悪かった」の一言で済ませていいのでしょうか?
50年という時間の中で、私たちの生活環境そのものが変わってきた結果が、今の「がん大国」日本の姿かもしれません。
毎日何を使うか、何を避けるか―その小さな選択が、自分自身と次の世代の健康を左右します。
🔍 参考資料:
- 朝日新聞(2025年7月15日)「体内に入るプラスチック、リスクは」
- 米コロンビア大学 論文(PNAS, 2024)
- ウィーン医科大学論文(Journal of Hazardous Materials, 2025)
- UNEP報告書(2023年):プラスチック中の有害物質 約3200種
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