軟部肉腫は、50を超える異なるサブタイプを持つ複雑な希少がんであり、残念ながらその治療は長年進展が乏しい分野です。しかし、最近の研究で、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)を従来の治療に加えることで、治療成績が大幅に改善することが示されました。この研究はUniversity Health Network(トロント)が主導し、『ランセット』誌に発表されました。
研究では、局所進行の高リスク軟部肉腫患者において、標準治療にペムブロリズマブを併用することで、無病生存率が39%も改善されることが示されました。具体的には、ステージIIIの未分化多形肉腫や高分化型および多形型脂肪肉腫患者143名を対象とし、術前放射線治療と手術のみの標準治療と、術前・術後にペムブロリズマブを併用する治療群にランダムに割り付けました。その結果、2年後の無病生存率は、標準治療群が52%であったのに対し、併用群では67%に増加しました。
ペムブロリズマブは、通常、メラノーマや肺がん、頭頸部がん、ホジキンリンパ腫などに用いられる免疫療法薬ですが、軟部肉腫にはこれまで標準的に適用されてきませんでした。しかし、今回の結果により、この抗体治療が軟部肉腫にも適応できる可能性が示されたことは、大きな一歩です。
一方で、ペムブロリズマブ併用群では、グレード3以上の有害事象の発生率が56%と、標準治療群の31%に比べて増加するという課題も見られました。とはいえ、局所進行がんの患者においては、転移リスクの低減が期待されることから、治療選択肢の一つとして検討されるべき治療法と言えるでしょう。
この研究は、長期的には全生存率の向上も目指しており、今後さらに多くの臨床医が軟部肉腫治療に免疫療法を取り入れることを期待しています。
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