次世代遺伝子治療を切り拓く進化型ウイルス様粒子

遺伝子治療分野における新たな進展として、進化型ウイルス様粒子(eVLPs:engineered virus-like particles)の研究が注目を集めています。ペンシルバニア大学のチームが開発した「指向性進化システム」を用いて、eVLPの生産効率や送達性能を飛躍的に向上させることが可能になりました。この画期的な技術は、遺伝子編集ツールの安全性と効率を大幅に高め、次世代治療の基盤を構築する鍵となるでしょう。

eVLPとは何か?
eVLPは、mRNAやタンパク質、リボ核タンパク質(RNP)などの治療物質を細胞内に効率的かつ安全に届けるためのウイルス様構造を持つナノ粒子です。従来のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに比べ、eVLPは以下の特性を持つため、次世代遺伝子治療の有望なプラットフォームとされています:
• 組織特異性:標的組織への正確な送達
• 副作用の軽減:オフターゲット編集が抑制される
• 一時的な発現:安全性を向上
今回の研究では、eVLPにレトロウイルスのGagタンパク質を融合させた構造を採用し、遺伝子編集ツールの正確な送達を実現しました。

研究成果の概要
研究チームは、eVLPのキャプシド(外殻)構造を進化させるため、バーコード化したsgRNA(シングルガイドRNA)を使用する指向性進化システムを開発。このシステムでは、eVLPを構成する数千の変異体を生成し、その生産効率や送達性能に基づいて最適な変異体を選別しました。
特に注目される成果として、以下の点が挙げられます:
1. キャプシド変異体の選別:3,762種類のキャプシド変異体を評価し、生産効率や送達性能が向上した変異体を特定。
2. 第5世代eVLP(v5)の開発:新たなキャプシド変異体(例:C507VやQ226P変異)を用いて、v4より3.7倍高い編集効率を達成。
3. 効率的な設計プロセス:従来の時間とコストがかかる方法に比べ、短期間で高性能なeVLPを開発可能。

eVLPの将来展望
この技術は、遺伝性疾患や感染症治療にとどまらず、がんや神経疾患などの難治性疾患の治療にも応用される可能性があります。さらに、eVLPは大規模製造が可能で、次世代遺伝子治療のコスト削減にも寄与することが期待されています。
研究の詳細は、Nature Biotechnologyに発表された以下の論文をご参照ください:
Raguram, A., et al. Directed evolution of engineered virus-like particles with improved production and transduction efficiencies. (2024). DOI: 10.1038/s41587-024-02467-x

eVLPは、遺伝子編集ツールの新たな標準となり、医療技術の未来を切り拓く重要な役割を果たすでしょう。科学者や医療関係者は、この技術を活用して新たな治療法を加速させることが求められています。

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