マウス実験で膵臓がん腫瘍の縮小を確認:新しいナノ粒子免疫療法の可能性

膵臓癌で最も多い膵管腺がん(PDAC)は最も致死率が高いがんの一つであり、その治療の難しさは、がん周囲の線維性腫瘍微小環境(TME)による薬剤送達の困難や免疫抑制に起因しています。この課題に対し、マサチューセッツ大学の研究チームが画期的なアプローチを発表しました。
研究では、脂質ベースのナノ粒子(NPs)を用いて、STINGおよびTLR4経路を活性化する免疫アゴニストを送達する方法を開発。さらに、腫瘍標的薬であるMEK阻害剤トラメチニブとCDK4/6阻害剤パルボシクリブ(T/P)を組み合わせた治療法を実験的に検証しました。この多面的な治療法により、免疫応答が強化され、マウスモデルにおける腫瘍の縮小および長期的な生存率向上が確認されました。
STINGとTLR4の免疫経路活性化は、がん細胞や抗原提示細胞による抗原提示の増加、T細胞およびナチュラルキラー細胞の活性化を促進しました。また、ナノ粒子技術により、これらのアゴニストを同時に腫瘍部位へ安全かつ効果的に送達することが可能となりました。治療を受けた動物の中には腫瘍が完全に消失する例も見られ、膵臓がん治療の新たな希望を示しています。
今後の課題としては、治療中断後の再発に対する追加的な介入策が挙げられます。しかし、このモジュール型の治療プラットフォームは患者個別のがん治療へ応用可能であり、膵臓がん以外のがん種、例えば大腸がんや肺がんなどにも応用できる可能性が期待されています。
研究は科学雑誌 Science Translational Medicine に掲載されており、今回の成果は多分野の協力による成果であると研究者たちは強調しています。新たな治療法の実用化に向けたさらなる研究に注目です。

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